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「お前、また、違う男とデートするとか言うなよ」
「しないよ、もう。疲れた。まずはあなたとデートをして、あなたを分かりたいと思ったの。あなたは分かりにくいから、会話をして、もっと分かるようにならないとね」
「うるさい、悪かったな」
「よく分からない行動が多いね。面倒だと言いながら、何度か助けてくれたから」
「助けたか、俺?」
「最初のころからそうだった。自慢話をする先輩から救い出してくれたこともあったしね。それに綸同君のことも背中を押してくれた。この間の美優ちゃんの時も、仲裁してくれたし、デートすると言ってくれると思わなかった」
「ああでも言わないと、止められないだろ。それに嘘をついて連れ出すわけにいかないだろ。お前がはっきりしてほしいと言ったから、言っただけ。嫌だったのか?」
「うれしかった」と言ったら立ち止まってこっちを見てきた。
「ちょっとね、うれしかった。ああいうのっていいね」
「そうか?」
「サリは怒っていたけれど、友達の前ではっきり言ってくれたから、うれしかっただけ」
「だって、本当のことだろう? 別にお前が隠したいなら、そうしてやるよ。俺と違って、お前は気にしすぎるようだから」
「ありがと」
「お礼は言わなくてもいい」
「あなたって、分かりにくいけれど、きっと優しいんだろうね」
「その、『きっと』と言うのが気にくわないな」
「え、だって、そうなのかどうか、確信が持てないし」
「俺はお前の方が分からないな」
「そう?」
「すねたり黙ったりして、何を考えているか分からない」
「そうかな?」
「そうだ」と強く言われてから、彼が隣に歩いていることがうれしくなり、
「あの映画の恋人同士も、こうやって、喧嘩をしながら仲良くなっていくのかもしれないね」
「どっちだよ。さっきのか、それともお前のお気に入りの映画の方か?」
「両方」
「そうかもな。現実はそうはうまくいかないだろうな。犬童のような女が間に入りたがるし」
「え、見てたの?」
「つい、心配になって目がいってしまうんだよ。甲羅は無責任に実況中継してくれるし」
「実況中継?」
「今、間を入りました。おーと、意外と難しそうだ。二人の間を必死になって入ろうとしております。雌馬犬童号が、花咲号にあしらわれております。鼻差で大橋号に抜かれております」
「なにそれ?」
「競馬中継のごとく、甲羅が実況していただけ。みんなが笑っていたけれど、俺はそれどころじゃなかったな。心配だったから。お前だと確実に負ける。あの女は強すぎる。手の力も精神力も」
「そうかも」
「ただ、花咲に、軽くあしらわれているようには見えるけどな」
「彼女、来なかったけれど、きっと来るって花咲君が言っていた」
「当り前。恋敵のものは一応チェックするだろうな。あの女なら。でも、絶対に認めないと思うけど」
「同感」


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