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 その日に、ひーちゃんに電話をしたら、
「ちゃんと準備した? 森園に聞かれるから、報告しないとね」と言ったので、
「なんで、そこに森園君が?」と驚いた。
「え、だって、心残りそうだから、この機会にくっつけてやれって、あいつに言われたよ」何を頼んでいるんだ、森園君は。
「二人をそのまま自然に任せていたら、絶対にくっつかないからって」
「あのねー」
「だって、それはあるよ。言えばいいのに言わないなんてね。お互い、言わずに卒業してしまうところが心配だって」
「言わずにと言われても」
「綸同君、前に付き合ってほしいって、後輩に言われたらしいよ」
「え?」
「テニス部の後輩らしいよ。それで断ったんだって」
「知らなかった」
「森園がそれで確認したらしいの。相手の子、割とかわいい子だったから、どうしてダメなのかって。ああ、もちろんね、黄和さんの前のことだからね」
「そう」
「それで、女の子と付き合うのに対して積極的じゃないらしいよ。そのあとね、黄和さんが来て、受験もあるから、かなり困っていたらしいよ。そういうことなら、『あの後輩と付き合っておけばよかったのに』と言っていたらしいけど。いくらやんわり断ってもね、黄和さん、分からなかったらしいの。『ああ、分かってるって。今はダメなんでしょ』とか言って、分かってくれなかったらしいの。ずっとダメだってことが」
「はあ」
「それで、由香に嘘を教えるんだから困ったものだよね」
「私、その話をおしえてあったっけ?」
「違う。クラス会で聞いたの。そばでやり取りを聞いて驚いちゃった。言ってくれたら、ちゃんと確認してあげたのに」
「ごめん。その話題を出すのもちょっと嫌で」
「そうだよね。黄和ちゃんって、どこのクラスにも顔を出す子だったけど、本島朝日と同じだからね」
「そういえば、聞いた。本島朝日がそっちのクラス会にわざわざ出向いて」
「そうそう。あいつ、出たがりだから、勝手に合流してきたよ。しっかり会費を徴収してたけどね」
「そう」と言って笑った。
「うるさくて嫌がられていた。同じクラスでもないのに、うるさかったから。女の子たちは雰囲気が変わっていたから、男子は驚いていたよ。化粧してたり派手になってたり」
「そうなんだ」
「あの子なんてね」とそれぞれの近況を話した後、
「ああ、それでね。綸同君と黄和さんの話に戻すけど」
「ああ、それって、どうしてなのか、いまだに分からない。綸同君もよく分かってなさそうだし」
「分からないんじゃないの。綸ちゃんはそういう部分で疎いからね。でも、森園がテニス部の子に確かめていた時に、ちょうどそばにいて気になったから聞いちゃった」
「ほかにも聞いていた子がいたの?」
「違う。由香の名前が聞こえたから、こっちからそばによって行っただけ。近くにはほかにはいなかったよ。その辺はさすがに森園でも気を使うよ」
「そう」それなら大丈夫そうだな。
「それで、綸ちゃんがかなり困った顔をしてたよ。黄和さんのことも、チラッと言ってた。付きまとわれて困っていて、あの子のことを迷惑だとかそういう話をね、森園君と会話をしたような気がするって言ってた。それを聞いて、黄和さんが勘違いしたんじゃないかって言ってたよ」
「勘違いするのは分かるんだけど、どうして、それが私の話になってるの?」
「そこがよく分からないらしい」
「黄和さんに聞いても、覚えてなさそうだよね」
「そうだろうね。あの子、勘違いするの得意だったから、前にねえ、違うクラスの男子が怒ってたみたいだよ。友達に教えてもらったことがある。違う子が好きだったのに、勝手に言いふらし」似たようなことを言っていた男子を思い出した。
「俺、あいつなんて好きでもなんでもないぞ。なんで、黄和は嘘を教えるんだ」と怒っていた。
「それで、相手の子が勘違いしちゃって、大変だったんだって。あの子、男の子と話すのが好きだから、寄って行ってはそういうことをしてたみたいだし」
「え、そうなの? そういう理由なんだ」
「ま、ほっとけばいいんじゃないの。彼女は結果として綸ちゃんに振られたんだしね」
「え、そうなの?」
「さすがに困るから、『来ないでほしい』って。あの綸同君が言ったみたい」
「知らなかった。彼はそういうことは言わなさそうに見えるのに」
「森園君と二人で勉強してるのに、話しかけてきて邪魔ばかりしてたから、森園も帰るように注意はしたけれど、『いいから、いいから、大丈夫だから。邪魔しないから』と、ばかり言って分かってなかったらしいよ」
「そう」
「それで仕方なく、はっきり言ったみたいだね。でも、その後、何度か電話は掛かってきたみたいだよ。合格してからね」
「え、そうだったの?」
「でも、綸ちゃんはそれどころじゃないし、電話が掛かってきても相手にもしてなかったと思うけど」
「そう」
「その程度だから気にしなくてもいいって。どうせ、違う子に行ってるよ。今はね」
「そうかな」
「どこかの専門学校に行ったとは聞いたけれど、私も良く知らないしね」
「そう」
「それより。雑誌を参考にしてがんばってよ」
「あの雑誌の切り抜きはなんで?」
「綸ちゃんの好みの女の子。森園が参考にしろって」
「何をしてるのよ」
「由香と綸ちゃんだと、盛り上がらなさそうだから、心配してるんだって」
「よけいなことを」
「えー、だって、せっかく大学に入ったのに、出会いがなさそうだし、ほっといたらいつまで経ってもくっつきそうもないから、俺たちで盛り上げようって」呆れる二人だなあ。
「そういうことで盛り上がらないでよ」
「いいじゃないよ。綸ちゃんはおすすめだよ。ただ、時々、何考えているかわからないときもあるけど、いい人だからね。がんばれ」と言われてしまった。

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