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 同じ学部の子が寄ってきて、
「あれって、彼氏?」と大きな声で聞かれて、
「へ?」とびっくりした。
「違うの? 日曜日に凱歌公園でデートしてたでしょ」とさらに大きな声で聞かれてしまった。
「あ、へ?」さすがにとっさに違うとも、そうとも言えなくて、そのうち、みんなが寄ってきて、
「どうかしたのか?」と聞いてきた。
「大橋さんに彼氏発覚」と大きな声で言われて、
「あ、ちょっと」と止めた。でも、
「えー、だれ?」とみんなに聞かれてしまった。

「大橋がデートしたってさ」と言われて、花咲君が、
「そう」とだけ返事をした。席に座っていたほかの人たちが、
「え、九条とか?」と聞き返した。でも、
「え、違うだろ。知らない奴だったらしいぞ。ライデの子が目撃したらしいから」
「どこで?」
「凱歌公園だって」
「凱歌公園って?」と花咲君のそばにいた子たちが周りを見た。
「凱歌スクエアにある公園」
「え、あそこってプラネタリウムだけじゃないの?」と言っているときに、私とエミリが教室に入ってきて、
「あ、大橋。お前、だれとつきあってんの?」と、また、聞かれて、
「言わない」と顔をそむけた。
「本当なのか?」と聞かれたけれど、エミリと席に座った。
「ウソだろ。お前、九条と付き合ってるとか言うデマもあったけど、花咲とつきあうんじゃないのか?」と大きな声で聞かれて、
「答えない。疲れたから」とだけ言った。今日は何度同じようなことを聞かれたんだろうなと思った。

 学食で食べていたら、
「あ、いた」と、嫌な声がした。そうしたら、甲羅がそばにやってきて、
「ねえ、ねえ、どこのどいつ?」と聞いてきた。
「うるさいの」とサリが追い払おうとしてくれて、
「いいじゃん。九条ちゃんも心配してるしさ」と言われて、思わずそっちを見たら、九条君が私を見た後、そっけない態度で行ってしまった。
「もう、いいじゃない。由香は友達と一緒に行ったんだって」とサリが代わりに答えてくれた。とっさにエミリがそういうことにしてくれて、それで、聞かれたらそう答えている。
「グループじゃないでしょ。あそこに行くなら、絶対に彼氏だって」と言われたけれど、
「甲羅は誰と行ったのよ?」サリが聞いたら、
「じゃあなあ」と逃げるようにして行ってしまった。
「九条君、そっけないね。聞いてきてもよさそうなものを」と、サリに言われたけれど、あいつにとってはその程度のことなのかもしれないなと思えた。何度かデートした程度の同級生。そういう扱いなのかもしれない。私のことは女扱いはしてくれそうもないなと思えた。これが美弥さんだったら心配に違いないだろう。婚約のときも、何度もやめるように言ったのだから。

 家でぼんやりしていたら、メールが届いた。
「言い訳したいのなら、すれば」という訳のわからないものだった。
「なんだ、これ」としか言えなかった。怒ってるにしろ、わけがわからないなと思い、ほっとくわけにもいかず、
「言い訳します。デートしました。以上」と九条君に返したら、意外にも電話がかかってきて、
「分からないだろ、それだけじゃ」と怒っていた。
「あのー、何で怒ってるわけ?」
「どうせ、あいつなんだろ」と言われて、バレていたのかと驚いたけれど、花咲君以外だと彼以外は思い当たらないから当然だなと思い、
「ごめん」と謝った。
「内緒でデートをするんだな、お前は」
「誤解だよ。友達が間に入って、それで行って来たらということになってね」
「その程度で行くな」
「あのね、あなたに怒られる筋合いはないと思うけど」
「あるだろ」
「ないでしょ。だいたい、無関心な態度だったじゃない。学食で」
「他のやつらがいるのに、喧嘩するわけにはいかないだろ」
「えっと、それはそうだけど、別にあなたに断る必要はないわけで」
「あるだろ」
「どうして?」
「だって、お前と俺は」
「付き合っているっていうの? あれで?」と聞いたら黙ってしまった。
「撮影が終わりました。3回デートしました。でも、それまでのやり取りとは変わらない。女性として扱ってもらった記憶もないけど」
「した」
「してもらってないよ。だいたいね、あなたと私って、そういう関係なの?」
「そういう関係って?」かなり機嫌が悪そうで、
「ちゃんと付き合っている、そういう関係なのかって聞いているの」
「一応はつ、き、あってる……だろ」と、つっかえながら言った。
「ちゃんと好きだと言われたわけじゃない。お付き合いしようと言われたわけじゃないよ。デートに誘われて、3回デートしました。その程度で怒らないでよ」と言ったら黙ってしまった。
「でも、行くか?」
「だって、それは」
「どうせ、あこがれの男だから、デートしたかっただけだろ。お前はそういうやつだよな。俺とデートしながら、別の男ともデートして」
「甲羅と一緒にしないで。私はただ、ちゃんと話をしたかっただけ。あなたに断ろうかどうしようか迷ったよ。でも、『付き合ってるわけじゃないから勝手にしたら』そう言われそうだったから、言えなかっただけ」と言ったら、しばらく黙った後、
「でもな」と納得していないようだった。
「あなたにちゃんと付き合おうとか、好きだとか言われた後なら分かるよ。ただ、デートに誘ってくれて、それで、甘い雰囲気になるわけでもなくて、みんなには内緒にしている時点で、そういうことなのかなと思ったし」
「言わなくてもいいだろ。うるさくなるだけだし」
「でも、言わないってことはそういうことでしょう。私と付き合ってるのは恥ずかしいってことなんじゃない」つい、声が大きくなってしまい、
「違う」と言ったけれど、
「美弥さんが相手だったら、あなたはあの場で怒ってたし、心配してたかもね。でも、今頃、こうやって電話をしてくるってことは、そう言うことじゃない。だから、私も謝らない。デートはしました。以上。じゃあね」と言って電話を切った。もう一度掛けてきたけれど、ほっといた。

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