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 ひーちゃんから電話があり、
「この日、空いてる?」と日にちを告げて聞いてきた。
「え、なんで?」
「試写会に行って来たらいいよ。知り合いからもらったの」
「何の試写会?」と聞いて、アニメだと言ったので、
「え、それは」と驚いた。
「森園がもらったんだって。でも、都合がつかなくて綸ちゃんと行って来たらいいよ」
「アニメを彼が見るの?」
「好きみたいだよ。男の子向けみたいだけど、大人も見るから大丈夫だって。行ってきなよ」と言われて、迷った。そのアニメは見たことは一度もなかった。
「じゃあ、返事をしておくからね」
「あ、ちょっと」と言っても電話は切れていた。

 目の前を九条君が通り過ぎて、こっちを見るわけでもないけれど、意識はしてるなというのが態度に出ていて、
「あの」と声を掛けた。そばにいた子たちは話に夢中になっていて、こっちには気づいていなかった。九条君が仕方なさそうな顔をしてこっちを見たけれど、
「えっと」と困ってしまった。
「なんだよ」と聞かれて仕方なく、彼のそばに行き、
「あれ、使えない」とだけ言った。
「別に俺に遠慮しなくてもいいぞ。どうせ、俺は行かないし」と言われて、困ったけれど、
「草刈とでも行けばいいだろ。だったらな」と行ってしまった。うーん。かなり、そっけない態度になってしまい、困ってしまった。私がいけないのは分かっているけれど、それでもなあ。
「どうかした?」サリが寄ってきて聞いてきたけれど、
「あ、ちょっとね」としか言えなかった。

 昼食を食べ終えて、エミリが呼び止められたので、私は待っていたら、海里ちゃんが通りかかり、
「先に行きましょ」と言われて、エミリと別れた。
「海里ちゃん、デートとしたことある?」
「唐突だね」
「ちょっとね、会話に困ったから、どうしたらいいのかと思って」
「ああ、デート相手とのこと? ダメだったの?」
「というか、何を言っても、相手の反応が薄いの」
「興味がないとか?」
「いや、ニコニコしてる。相手の人、笑顔は多いの。優しいのか、育ちの良さなのか、そういう表情が多い」
「へえ、なるほどね。いい人じゃない。怒ってばかりの人よりはいいと思うけれど」
「でも、ちょっと心配だったから」
「相手が笑っているのなら、いいんじゃないの?」
「うーん、どう思っているかが不安」
「聞いてみたらいいじゃない。相手がどう思って、何を感じているか。その答えは相手にしか分からないわよ」
「え?」
「前にいたのよ。男子でね。私が一方的に説明したり話したりして、相手は全然返事が返ってこなかった。でも、『私といるとうれしい』って言ってたらしいから」
「え、なんで?」
「そういう人なのよ。女の子と何を話していいかわからないんだって。聞いているほうが楽なのかもしれない。でもね、女の子が楽しそうに話をしているのを見ているのがうれしいらしいの」
「え、そういう人がいるんだ?」
「色々いるからね。だから、相手がどう思ってるかなんて、こっちはわからないよ」そうかもしれないな。今度会ったら聞いてみるしかないか。その前に……、
「怒っている人と和解するにはどうしたらいいかな?」
「また、彼女?」
「別件」
「そう。なら、いいけど。あの人の場合はほっといたほうがいいわ。あなたでは無理よ。彼女は満足することはないわね。ずっと」
「え?」千花ちゃんのことだろうな、やっぱり。
「彼女は満足しない。花咲君を手に入れたとしても、ほかのことでもずっとね」
「え、どうして?」
「そういう人だと思う。だから、相手に合わせるなんて、疲れるだけだと思うけどな。ああいう不満をすぐに顔や態度、言葉に出す人って、周りのことを考えて発言しているわけじゃないもの。自分が満足するかどうか。でも、それだと、周りの同調は得られないだろうから。そうなるといつまで経っても同じことを繰り返し、不満を口にし続ける気がするけどな」あり得るかもしれないな。千花ちゃんに同調するような子はグループに一人もいない。花咲君は優しく笑顔で対応はしているけれど、彼女に同調しているようには思えなかった。
「価値観が合う人と話した方が早いと思うけどね」
「価値観?」
「不満を言い合いたいのなら、そういうことを言い合うことに抵抗がない人とした方がいいと思うけど。あのグループでそれをしたら嫌がられるよ」そうかもしれないな。
「少なくとも男性にはやらないほうがいいと思うけど。それにもっと明るく楽しくなるような話題の方が、話しやすいし」
「そうかもね」
「それから、怒っている人と和解するのもコツがいるけれど、相手の性格によって対処が違ってきてしまうから」
「え?」
「相手がちやほやされて満足するようなタイプなら、近寄ってゴマ擦って、謝り倒してみたらいいんじゃないの。奢るとかプレゼントか何かを渡すとか」
「いや、そういう人じゃないかも」
「だったら、誠実に謝った方がいいタイプだね。その場合は謝って、ごめんなさいって、素直に言うしかない。間違っても、言い訳して、自分を正当化はしたら嫌がられるから、しないほうがいいわね」
「なるほど」
「相手と話し合えない場合は、話し合うしかないよ。誤解や思い込みから成り立っている喧嘩の場合はそうしないと。相手が男性なら、特にね」
「え?」
「男性が思い込んでいることと、女性が考えていることが違うことがあるから、そういう場合は、そこを話し合うしかないわよ。九条君か誰かみたいね」と聞かれて、仕方なくうなずいた。
「彼となら、話し合うしかないかもしれないわね。納得できるまで話し合ってみたら。それでもだめならしょうがないわよ」
「そうかもしれない」
「彼の場合は間に仲裁に入ってもらうというのは難しいと思う。直接言った方がいいわよ」
「そうかもしれないね」
「あまり悩まないほうがいいわよ。彼女に八つ当たりされるわよ、それだと」千花ちゃんのことだろうな。段君を励ましているどころか逆効果になっている。あれだと、嫌がられるだけだと言うのに。
「あきらめたら」「それか、もっと、自分に振り向かせる努力をするとか」「あ、あなただとかなり努力しないと無駄に終わるかもね」それを彼に告げる必要があるのだろうかと言いたくても、彼女ともめることを恐れて、だれも注意できない。彼女は花咲君がいる時だと止められることを知っているからか、いないときにそう言ってしまっていた。
「同じ学部なんだし、ちゃんと仲直りしておいた方がいいわよ」と言われてうなずいた。

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