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 メールで感想を送ったら、昼休みに返事が返ってきた。お礼とともに、時間が空いたら部室に遊びに来てほしいことと、九条君に感想の返事を返すように書いてあった。あいつは感想メールを送ってないらしい。そういうところはそっけないのかも。仕方なく九条君を見かけたときに、
「感想をメールしてくださいって」とだけ言って、行こうとしたら、
「お前、ダメだったのか?」といきなり聞かれて、彼の顔を見た。
「何のこと?」と聞いても黙って、顔を見ていたので、うつむいた後、
「あの人は、私とは合わないとは思ったよ」
「ふーん、そうか。あこがれは憧れのままの方が良かったって、ことだろ」
「ちょっと違う。彼と話をしたかったの。色々なことを確認したかったし、話ができて、それはうれしかったけれど」
「それで?」
「あの人は違う……」と言ったら、彼が黙っていた。
「お前」と言いかけたら、ほかの人が来て、
「メールは一応送っておくよ。お前にまで、催促しなくてもいいのにな」
「心配なのかもしれないよ。昔のことがあるから。ちゃんと送らないと」
「お前……」と何か言いかけて、
「九条、早くしろよ」と呼ばれていて、手を挙げて行ってしまった。

「元気がないな」と段君に話しかけられた。
「もうすぐ、花咲も来るから、相談したら?」と言われてしまい、
「うん、大丈夫」と言ったら、困った顔をした後、
「お互いに元気がないとダメだな。俺はこういう時にうまく励ましてやれない」
「いいんだよ。気の利いたことを言わなくても、その気持ちだけは伝わるから」
「そうなのか?」
「だから、ありがと」
「ごめんな。あいつらは付き合うことはないと思うから、花咲のことは心配しなくてもいいぞ」
「え、なにが?」
「花咲がデートしたから、違う男と付き合ったと言ってるやつらもいるから。でも、デートじゃないそうだから」
「はあ」
「違うのか?」私がぼんやりしていたので、聞き返してきて、
「デートって、花咲君が?」と聞いたら、
「いや、してない。犬童が人目もはばからず誘ってるから、そう誤解している奴らが勝手なことを言っているだけだから。花咲は相変わらずだよ。子守してる感じにしか見えないな」花咲君と話すと千花ちゃんが引き離すように話に割り込んだり、そばにいると間に入ってきたりして、居心地が悪くなってしまったために、彼のそばに寄れなくなっていた。
「なんだか近寄れなくて、話せないよ。また、にらまれそう」
「無理じゃないか。そういう態度をするからグループのやつらも呆れているよ。ちょっと、疲れる」
「花咲君は、どう思ってるのかな?」
「うーん、あいつは相変わらずだよ。近づきすぎない距離感を保ちながら話してる。ああいうところは俺にはできないな」
「そうだね」
「本当に元気がないな」と言われて、
「大丈夫。学園祭が近づいてきたから、ちょっと、不安になってきただけ」
「不安?」
「思いっきりバカにされそうな気がするの。相川とかその周辺とか、甲羅とか、あの先輩とか」
「先輩?」
「ああいうのは苦手だな。人が一生懸命やったものを馬鹿にするような態度の人は」
「それは俺も嫌だな」
「一生懸命みんなで作ったけれど、相川と似たような態度の嫌な先輩のことを思い出して、ああいう人も見るんだなと考えて、不安になっちゃっただけ」
「気にするなよ。そういうのは笑うやつらの方が嫌だろ」
「そうなんだけど」
「相川は自分のことを気にした方がいいと思うけどな。あいつの彼女、ちょっと変なバイトをしていたらしいし、それで、あんな、ああ、いや、これは言ったらいけないよな」そのうわさは彼らがいないところで何度か流れている。相川の彼女、ミイさんの顔の変化は、いかがわしいバイトをして稼いだお金でできたことだと。
「段君はそうだよね。言わないよね、そういうことは。なんだか心配になってきたな」
「なにが?」
「あちこち」
「あちこちって?」
「今更ながら緊張してきた。映画って完成されたものを見るとすごいね」
「見たのか?」と聞かれてうなずいた。
「九条との映画だろ。ちょっと心配だ」
「どうして?」
「身内として心配になる感じだよ。九条と恋人役なんて、かなり心配」
「はあ、そういうものなの?」
「花咲は平気で見ていたけれど、俺は九条とのラブシーンはさすがに恥ずかしくて見ていられなかった」
「そうなんだ。花咲君は平気なんだね」
「あいつ、よく分からないよ。大橋がデートしたことを聞いても平気そうだしなあ」
「それはそうでしょ。友達なんだし」
「俺は大橋と花咲は似合っていると思うぞ」そう言われてもなあ。
「あまり口に出せないけれど、ほかのやつらもそう思っていると思うぞ」と言われてしまった。

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