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「なによ」と千花ちゃんが怒鳴ったために、みんながそこに注目していた。
「こんなの、どこが映画なんだよ。馬鹿らしい。作る気がしれないね」と相川が言って、
「やだー、悪いわよ。本人たちは必死みたいなんだもの」ミイさんが小ばかにするように言った。そこにいた人たちは、
「また、始まった」という冷めた空気で見ていた。相川は何かとそういうことを言いたがるからだ。
「大橋みたいなどうでもいい学生を使って、作るなんて気がしれないね。ミイみたいに画面映りがいい方がいいね」と相川が言ったために、
「そうかしら」千花ちゃんはミイさんの顔を見て、足の先まで見たけれど、「背が足りないかもね」と言おうとしてやめていた。でも、その雰囲気が、見下した感じが出ていたために、二人が気に入らなさそうな顔になった。
「女優は顔だ、顔。それ以外なんて見るものはないだろ」と相川が言ったため、
「えー!!」とあちこちから声が上がった。女性が多かった。
「顔じゃないでしょ。演技でしょ」という声がしたけれど、相川はそれを気にも留めず、
「馬鹿じゃないのか。顔だろ。顔がきれいじゃなきゃ、女優じゃないぜ、なあ、ミイなら女優になれるな」と相川が自信満々に言ったけれど、
「え、その程度で言われても」と空気も読まずに言ってしまった男子学生がいて、そのあと、ひそひそと言い合っているのを見て、打ち消すように、
「お前のライバルなんだろ。花咲なんかのどこがいいのか分からないな」と相川が言った。
「あなたみたいな人には彼の良さは分からないわよ」
「えー、お前の目が節穴なんじゃないの?」
「うるさいわねえ、あなたと付き合うよりはマシよ」
「お前に言われたくないな。うるさい女。同じ学科のやつらが逃げ回っているって噂を聞いたぞ。お前と話すと怒られるから、嫌だってさ」
「え?」千花ちゃんが動揺していた。
「当たってるだろ。お前のような女ってうるさいんだよな。ミイはその点、かわいくて」
「草刈さんに振られたって噂を聞いたけど」千花ちゃんがそう言ったために、
「ふ、振られてなんかいない。俺がふってやったんだよ」と相川が必死になって言い訳したけれど、
「え、エミリは相手にもしてなかったよ」と同じ学部の子たちが言い出してうなずいたために、
「うるさい。違う」と相川がごまかそうとしたら、
「嫌だ。草刈さんが嘘を言ったのね。悦治は私と付き合って」ミイさんが言いかけたら、相川が手をかざして止めた。ミイさんが途端に気に入らなさそうな顔をして、
「何よ、あんな女なんて目じゃないって言ってたじゃない。私と付き合っ」ミイさんが言いかけたら、
「やめろよ、ミイ」と相川が気に入らなさそうな顔になって、
「ひどいわ。私の方がかわいいと言ってくれて」
「作った顔で言われてもなあ」という小声がその間に聞こえてきてしまったために、みんながひそひそ言い合っていて、ミイさんがにらんであたりを回していたけれど、
「こんな映画なんて上映するな。時間の無駄無駄」と相川が話を変えようとしていて、
「え、でも、草刈の出番の時に、うれしそうな顔をしてたけど」とそばの男子学生がからかうように言った。
「お、おれは見てないぞ。だいたい、素人の映画なんて」と相川慌てて否定しようとしたら、
「頑張ってると思うけど。素人なりに」
「俺でもできるね、こんなもの、なあ」と相川がミイさんに聞いたら、彼女がうなずいていたけれど、
「だったら、作ってから言いなさいよ」と千花ちゃんがあきれていて、
「作るまでもないさ、なあ」とそばにいた人たちに同意を求めていた。
「え、まあ」という人もいたけれど、
「え、そう? 私、よくできていると思うけどなあ」と女の子は同調してなくて、
「馬鹿じゃないのか、こんなものに時間と金を掛けるなんて」と相川が言い出して、
「そういう言い方は」と女の子が困った顔で止めようとしたけれど、
「あいつら、こんなもののために、夏中、費やしたらしいぞ。馬鹿らしい。女にモテない奴って、暇だよな」相川が言った言葉を聞いて、
「え、でも、顔を作るよりは」と空気も読まずに言い出す女の子がいて、ミイさんがその人をキッとにらんだために、
「やだ、こわい」と逃げ出した。
「え、でもさあ」と何人かがミイさんの顔を見ていた。特に目のあたりを。
「なによ」とミイさんがにらんでいて、さすがにまずい空気になったために、そこから移動する人もいたけれど、
「俺はこういうのは面白いと思うけどな」と言い出す人もいて、
「俺、見てて面白かったけどな。大橋って、かわいいと思えたし」
「え?」千花ちゃんが驚いていた。
「花咲と付き合ってるって聞いたけど」
「そうか? 九条と仲がよさそうに映ってたじゃん」と言い合っていた。


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