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 仲島君たちに、
「お前のこと、かわいいって言ってた男子学生がいたぞ」と教えてもらった。
「えー、なんでよ」とサリだけがぼやいていた。あとの子はうなずいてくれて、ちょっとうれしかったし恥ずかしかった。
「ああやってさあ、画面で見ると違うよな。女の子が輝いて見えるからかもなあ」とそばの人に言われてしまい、映画ってつくづく、魔法がかけられるんだと思った。
「あるよねえ、ああいうので撮ってもらえるのは、すごいと思う。きれいに撮ってもらえるし、自分の違う魅力が発見される」
「そうそう、自分史上一番輝いた瞬間だろう」と上久保君にも言われてしまった。
「大橋は画面では違ってたなあ」
「男ってすぐそれだから」とサリがぼやいていたけれど、
「違うと思う」と海里ちゃんが止めた。
「なぜよ」サリだけは不満そうで、
「女優でもね、顔が綺麗なだけでは画面で見ても輝いて見えない人はいくらでもいると思わない?」
「え?」サリは驚いていたけれど、何人かはうなずき、何人かが、
「そう言われると、そうかも?」と顔を見合っていた。
「生き生きと動いている、そう言う表情などが輝いて見えるんだと思う。でも、それは誰でもそうなるわけじゃないと思うなあ。私たちの表情の輝きって、人そ れぞれ違うと思うけれど。そう言う表情を多くしていた由香ちゃんは映画にキャストされたってことなんだと思うけれど。私にはできないと思うから」と言って くれて驚いた。
「なるほどな。花咲がそう言ってたかもしれない」と仲島君が言い出して、
「えー、そう?」サリだけは不満そうで、あとの人は、
「生き生きとした表情か。そう言えば、私、どういう顔で笑っていたかな?」
「カメラで撮ったら、思った顔と違っていたことって、いくらでもあるかも」
「私が一番輝いた表情って何かな」とみんなが言い合っていた。段君が言っていたことを思い出してしまった。

 花咲君に会った時に、その話をしたら、そばにいた段君が、
「俺さ、あの映画に出ても、大橋のようには映らないかもしれない」と言い出した。花咲君が笑った。
「花咲なら、そのまま、明るい表情が多いしさ、女の子にも今より好感も増えそうだけれど、俺には無理かもな。自信がないんだ」と言い出して、
「そう? その人なりの良さが画面に出てくると思う。大橋が分かりやすかったのは、その表情の変化が分かりやすい。監督は大橋だから起用したと思えるけれど。草刈よりも印象に残るから」意外なことを言ったので驚いた。
「それはあるかもなあ。草刈は目立つけれど、画面で見たら、大橋のほうが大きく見えると言うか、どうしてもそちらに目が行くというか」
「それはそう言う脚本で」
「脚本もあるけれど、大橋のほうが表情一つ一つが違うからね」
「はあ、どういう意味?」花咲君が笑って、
「あの映画を見たら、男は大橋のほうを魅力的に感じるだろうってこと」と言われて、恥ずかしくなった。
「男は外見に惑わされるんじゃないの?」
「外見だけで選ぶのは甲羅とか、相川とか、ああいう感じかもね」と小声で教えてくれて、
「心から楽しそうに笑っている女の子の表情のほうにひきつけられるかもしれないね。アイドルを応援するのも、それだから。顔立ちがかわいいだけでは魅力は感じられない。その人の生き生きと動いている瞬間が好きなんじゃないの?」と花咲君に言われて、
「よくわからない」としか言えなかった。
「大まかに分けたら、大橋は女優タイプなんだ」
「え、そう?」
「あくまで僕の考えだけれど、大まかに分けた場合、草刈はタレントタイプ。受け答えが上手で、人と接するのが上手。明るく楽しいタイプ。モデルタイプもい る。飾っておきたくなるようなぐらいの近寄りがたい美人。アナウンサータイプは才女で親しみやすさは残してある感じかな。アイドルタイプもいるね。かわい らしい外見、ちやほやされる感じ。女優タイプは日頃、そこまで前に出ない。でも、ドラマや映画などだと輝きが増す感じかな。大橋は演技をするときに、目が 行ってしまいやすい、そういう感じなんだ」
「あの、恥ずかしい」女優って、言われても、自覚ないなあ。
「いや、なんとなくわかるかもしれない」と段君が考えていた。
「草刈って、タレントタイプだろ。明るいから、日ごろから目立つし」
「それだけじゃなくてね、タレントタイプは日頃、話の中心人物になりやすいから目立つわけだけれど、ドラマなどをやらせると、ぎこちなかったり目立たなく なったりする。女優さんで、容姿がそこまでじゃなくても、ドラマ、映画では違って見える人がいるだろう? 大橋はそういうタイプなんだと思うよ」少し照れ てしまった。
「そこまでじゃないと思うけれど」
「監督さんたちはどう言っていた?」カメラテストをしたときの話をしたら、
「画面映りがいいタイプの人っているからね。大橋にはそういう部分があるんだろうね」と花咲君に言われて、
「タレントさんとか、モデルさんとか、ドラマで見るとパッとしない人も、そう言えばいるね」と考えてしまった。花咲君が笑って、
「容姿の美しさだけでは難しいんだと思うよ。見ている人が安心して見られるような演技が最低限できないと視聴者が疲れてしまいやすいし、そのほか、いろいろな部分で違っているのかもしれないね」よくわからないなと考えてしまった。
「うちの大学にもさまざまなタイプの人がいると思うよ。アイドルタイプ、女優タイプ、アナウンサータイプ、モデルタイプなど、その人が動いていて一番綺麗に見える瞬間は違ってきてしまうし、好みによっては違うけれど、相手の笑顔には引き付けられるかもしれない」
「お前、それを言ったら、お前に今も張り付いている、怒ってばかりいて、笑顔なんて見たこともない、あの女は魅力的ではないと言っているようなものだと思うけれど」と段君が言い出した。千花ちゃんのことだろうな。
「そうかもね」と花咲君が笑った。そうか、そう言えば、千花ちゃんは怒ってばかりいて、不機嫌な表情ばかりで、笑ったところを見たことがないなあ。面白くないことがあっても、それを表に出しすぎると……嫌われてしまいやすいのかもしれない。
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