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 エミリと一緒に、下妻さんに紹介してもらった貸衣装屋さんに来ていた。さすがにバイト代だけだと、洋服が揃えられなかった。
「どれもいいけど、どんな感じがいいんだろ」ハンガーにぶら下がっていても、自分にどれが合っているか分からなかった。
「白以外でしょ、やっぱり」
「え?」と驚いた。
「結婚式のタブー色。それに準ずるパーティーだから、白以外にしておいたほうがいいって、下妻さんに教えてもらったよ」
「そうなんだ。どうしようね」
「ピンクは? これ、パウダーピンクの花のついたもの。かわいいよ」と見せられた。確かにかわいかった。花もついていて、でも、似合うんだろうか?
「かわいすぎない?」
「せっかくなんだもの。アピールしないと」
「誰に?」
「九条」
「え、だって、主役は彼のいとこだよ」
「そうじゃなくて、九条君に見てもらわないと。それから、ご両親とか」
「ああ、全員じゃないけど、会ってるよ」
「いつのまに」
「あれ、前に話したじゃない。弟さんに助けてもらって、お父さんにもお母さんにも会ってる。お会いしてないのはお兄さんだけ」
「いとこにも会ってるんだっけ? 早いね。紹介が」
「紹介じゃなくて、なりゆきで」
「じゃあ、気に入ってもらってるってことじゃない。良かったね」
「なにが?」
「気に入らない人なら、由香を招待するのに誰かが反対するでしょう。だって、親せきの婚約披露パーティーに呼ばれるなんて、うらやましい限り。家族ぐるみの付き合いって感じじゃない」
「えっと、成り行きで何度か会って、美弥さんはとてもきれいで優しい人なの。バイオリンもそれは綺麗に弾いてね。いい音色なんだ」
「美人のお嬢様のいとこがいたら、女の目は肥えてくるだろうね」
「やめてよ、心配してるのに」
「でも、良かったじゃない。由香と一緒に行くってことは、覚悟ができてるんだよ」
「覚悟?」
「もれなく、親せきにも紹介ってことは、結婚まで行くかもよ」
「あのね。そこまでおおげさじゃないでしょう」
「でも、とりあえず合格はもらってるってことだ。うらやましい。彼女同伴でパーティーなんて優雅だね。お金持ちって、感覚が違う」
「エミリもお嬢様じゃない」
「うちとは違う気がする。うちの父親、『お父様』って感じじゃない。『親父』って感じなんだよね」
「え、あれだけ素敵なお兄さんが生まれたのだから、お父さんも素敵なんじゃないの?」
「お父さん、楽しい人って感じ。優雅なパーティーはないんだって。ホームパーティーでも気取らないだろうね。お母さんは明るいし、親せきは集まるんだけど、親せきのどんちゃん騒ぎって、感じで」
「なるほど」としか言えなかった。うちの親せきも優雅とは程遠い。どんちゃん騒ぎというほうが、親せきの集まりには近いような気がする。
「金持ちだ。ハイソサエティだ。住んでる世界が違うね」
「え、そこまで格式ばるかな?」
「だって、パーティーだよ。すでにそこからして違う。宴会じゃないよ」そう言われたら、そうだった。

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