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「なによ?」と聞いたら、私を見ていて、
「なに?」と聞いたら、
「あいつはお前のために、犬童を調教したのかもしれないと思えてきたからね」
「調教?」
「ああいう面倒な女と付き合える男は少ないよ。友達として大目に見るにしたって限度があるし。グループであれだけ浮いているのに、そのまま調教し続けた。理由が分からなかったけれど、ひょっとしたらお前が困っているのを見るに見かねてかもな。あいつ、そういうところでさらっとやってしまえるのかもな。俺にはできないけど」
「そうなのかな?」しばらく黙った後、
「俺はあいつに知らず知らずのうちにライバル心を持っているらしい」
「また、その、他人事のような発言」
「と、この間、長船に指摘された」
「はあ、どういう意味だろうね」
「俺たちが仲良くやっていくには、俺のほうが変わらないと難しいってさ」
「なんで?」
「俺のほうが不機嫌になりやすいからって。俺にお前が合わせているから、お前が戸惑っているってさ。俺に無関心ではいられないお前が、俺に振り回されているから……と教えてもらった」
「シオンさんったら」とうつむいた。
「お前は俺に夢中なんだろうな」とさりげなく、かなり恥ずかしいことを言われて、何も言えなくて、
「そう教えてもらった。だから、俺がやきもちを焼くのを減らせばうまくいくってさ」
「シオンさんの言うことは当たっているのかな?」
「そうなのかもな。でも、どうしても腹が立つんだよな。お前と花咲が話しているのを見かけると」と言われて、少し笑ってしまった。
「なんだよ?」
「ちょっとうれしかっただけ。好きだとはっきり言ってくれないのが不満だったけれど、そういう態度がそうなんだと思うことにするね」
「ふーん」
「分かりづらいから、本当にそういうこと、一つ一つで覚えていかないとね。あなたの態度で判断しないと困るから、大変だ」
「うるさい」
「言っとくけれど、これからは女性がいる環境に触れる機会は多いので、『面倒』『うるさい』は禁句ね」
「それは無理だろ」
「違う。態度に出さないように努力して。たとえ、怒っていても、面倒でもね。全てを表に出していたら、嫌がられるよ」
「分かってるよ。相川や犬童になりたくないからな」
「えっと、同意できない」
「あの二人は成長しそうもないけどな」
「エミリと花咲君なら何とかあしらえるでしょ」
「難しいんじゃないか? 二人ともあきらめが悪いから。お前もうまく逃げる努力しろよ」
「はいはい。そう言われてもねえ」
「あいつらに困ってるやつって、多いのかもしれないな」と言ったので笑うしかできなかった。

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